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8月21日(木)、Nakanoshima Qross1階コングレスクエア大阪中之島にて「NakanoshimaQross創薬クラスターキャンパス事業 キックオフイベント」を開催しました。
本イベントは、厚生労働省 令和6年度補正予算「創薬クラスターキャンパス整備事業」に採択された「Nakanoshima Qross創薬・実用化促進プログラム等支援事業」の始動を記念して開催されたものです。
本事業は、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスといった課題の解消を見据え、特にスタートアップやアカデミアが保有する創薬シーズの実用化を一気通貫で支援する新たな仕組みを構築することで、日本の創薬力の再構築・強化を目指しています。
国内外の製薬企業、VC、医療機関、規制当局、自治体など多様なプレイヤーをつなぎ、世界に通用する創薬拠点の形成と革新的新薬の創出を後押しすることが、本事業の大きな目的です。
当日は、120名ほどの現地参加に加え、オンラインでも多くご視聴いただきました。

澤理事長の開会挨拶では、Nakanoshima Qrossにとって「創薬クラスターキャンパス事業」は中核となる最重要プロジェクトであり、スタートアップ・インキュベーションのエコシステムを強化し、ヘルスケア・ディープテックの産業化・社会実装につなげていくことが狙いであると強調されました。また、開業から1年で国内外の連携や多様な取り組みが想定以上に進展したことを振り返り、最後にご来賓への謝意とともに、ご支援・ご協力を呼びかけて締めくくられました。

ご来賓でお越しくださった甘利明先生(元自由民主党幹事長・元衆議院議員)より、ご挨拶をいただきました。日本は技術力では優れている一方でビジネス化・産業化に遅れをとっており、創薬においてもかつての地位を失っている現状が指摘されました。その原因はシーズからスタートアップ、グローバル展開に至るまでのエコシステムが十分に機能していないことにあると述べられました。
Nakanoshima Qrossを世界的な創薬拠点に育て、日本を「創薬大国」として再び位置づけ、新しいイノベーションが常に日本から生まれる国にしていきたいと力強く語られました。

またご来賓でお越しくださいました、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)調整役 下田 裕和様からは、研究成果を社会に還元するためには「出口」を意識した取り組みが重要であり、Nakanoshima Qrossに集まる多様なプレイヤーが連携していくことにより、国際的な競争力を備えた成果が生まれると期待しているとの発言がありました。AMEDとしても研究から実用化への橋渡しを支援していく姿勢が示されました。

同じく大阪府 未来医療産業化推進監 奥村 健志様からは、大阪府として未来医療国際拠点の形成を後押ししており、Nakanoshima Qrossが産学官を結ぶ「ハブ」として大きな役割を果たしていることへの評価と期待が述べられました。

厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課長 安中 健様からは、本補助事業の施策背景についてご講演いただきました。
創薬や再生医療を含む未来医療の推進は、国民の健康と産業の発展の双方に資する国家的課題であり、厚生労働省としても極めて重要な政策分野であるとのご説明がありました。
そのうえで、研究成果を確実に社会へと実装していくためには、安全性と信頼性を担保しながらも迅速に制度化を進める仕組みが必要であると指摘されました。Nakanoshima Qrossにおける本事業は、産学官の多様な主体が一堂に会し、社会実装を見据えた研究開発やスタートアップ支援を展開できる点に大きな意義があると評価されました。最後に、こうした取り組みを通じて大阪から全国へ、さらには国際的に発信していくことへの強い期待が述べられました。

パネルディスカッションでは、
ファシリテーターに澤理事長・宮川理事長補佐のほか、パネリストとして加々美綾乃様(CIC Japan)、楠淳様(Johnson & Johnson)、髙橋 竜久様(Plug and Play Japan)、林幾雄様(LINK-J)、前田朋子様(日本ベーリンガーインゲルハイム)、劉雷様(アストラゼネカ)に登壇いただきました。
本パネルでは、日本の創薬スタートアップの現状とNakanoshima Qrossの役割を整理しました。
①課題は、IPO/M&A前提の発想による出口戦略の曖昧さであり、製品プロファイルとユースケースを起点に逆算する設計、さらにグローバル製薬のニーズ把握と事業化を担うプロ人材の強化が必要。
②「死の谷」を越えるには、資金・情報・人材の事前整備と、大学×製薬の建設的対話を促すコミュニティで共通言語を育むことが必要。
③地域発の国際モデルとして、大阪・万博を追い風に対面の近接性を生かし、ハード(拠点)×ソフト(伴走・ネットワーク)の統合で世界とつながるハブを目指す。
といった具体的なディスカッションが行われました。最後に各登壇者が「自らの経験やネットワークをギブする」という決意を表明し、澤理事長からは、「天の時・地の利・人の和が揃いつつあり、3年で成果を、5年で本格的なエコシステムを確立する」とまとめられ、熱意あるディスカッションを締めくくられました。
続けて、第1期選出の22社のNQスタートアップによるピッチを開催しました。
<採択第1期選出22社・登壇者>
リバスキュラーバイオ株式会社 代表取締役 CEO 大森 一生氏
https://revascularbio.com/
血管内皮幹細胞を用いた血管再生
信州大学医学部発達薬理学研究グループ 特任教授 山田 充彦氏
https://www.pediatheart.org/
小児心不全治療薬(βアレスチンバイアスアゴニスト(BBA))
リジェネフロ株式会社 CEO 森中 紹文氏
https://www.regenephro.co.jp/
iPS細胞由来ネフロン前駆細胞(iNPC)等のiPS細胞リプログラミング技術
東京大学 Purino Science, inc 岡本 研氏
サルコペニア治療薬(XOR 阻害薬)
トレジェムバイオファーマ株式会社 代表取締役社長 喜早 ほのか
https://toregem.co.jp/
歯の再生治療薬(抗USAG-1抗体)
モルミル株式会社 取締役COO 山本 政高氏
https://www.molmir.co.jp/
分子動態評価技術、ALS治療薬の創薬
株式会社HOIST 研究開発部 マネージャー 美馬 伸治氏
https://hoist-jp.com/
抗がん剤(HM-001、ALKBH3阻害剤)およびPDC/PDX用いた創薬支援
レグセル株式会社 研究開発部薬理マネージャー 榮川 伸吾氏
https://regcellbio.com/
免疫系制御技術(Treg細胞)
ユナイテッド・イミュニティ株式会社 代表取締役社長 岸田 将人(オンライン登壇)
https://unitedimmunity.co.jp/
免疫指向性ドラッグデリバリーシステム(PNP、P-LNP)
クオリプス株式会社 取締役副社長 谷村 忠幸氏
https://cuorips.co.jp/
iPS細胞由来心筋細胞シート
リードファーマ株式会社 Chief Financial Officer セティ クナール 氏
https://liidpharma.co.jp/
BROTHERS核酸(副作用(肝毒性、腎毒性、神経毒性)が回避可能)
株式会社抗体医学研究所 CEO 西村 公男氏
https://integrin.jp/?page_id=246
肺線維症の線維化形成を抑止する抗体医薬品(ATI-235)
ヒューマンライフコード株式会社 Chief Scientific Officer 山田 眞路氏
https://humanlifecord.com/business/
臍帯から抽出した間葉系間質細胞の再生医療等製品としての活用
Atransen Pharma株式会社 代表取締役 COO 河合 信宏 氏(オンライン登壇)
https://www.atransen.com
アミノ酸トランスポーターを標的としたがん治療法の開発
株式会社AutophagyGo 代表取締役社長 石堂 美和子氏
https://autophagygo.com/
オートファジーを産業レベルで測定する技術
東京大学大学院総合文化研究科 土岡 由季氏
https://www.kistec.jp/r_and_d/yubo-p/sato/
光スイッチ技術を用いた創薬事業
株式会社イクスフォレストセラピューティクス 代表取締役社長CEO 樫田 俊一氏
https://www.xforestx.com/jp
RNA構造の超並列生化学解析システムとin silico解析パイプラインを統合した技術プラットフォーム
ルクサナバイオテク株式会社 代表取締役社長 CEO 佐藤 秀昭氏(動画配信)
https://luxnabiotech.co.jp/
人工核酸技術を基盤とした核酸医薬品開発
Veneno Technologies株式会社 事業開発本部長 松川 泰久氏
https://veneno.jp/ja/jphome/
ジスルフィドリッチペプチド医薬品の創製
京都大学 アイセムス特定研究員 木梨 尚人氏
哺乳類用着床促進薬
株式会社FerroptoCure 代表取締役 大槻 雄士氏
https://ferroptocure.com
フェロトーシス誘導性抗がん剤(xCT阻害剤、ALDH阻害剤)
株式会社Arktus Therapeutics 代表取締役CEO 大岩 智大氏
https://arktustx.com/
iPS由来間葉系幹細胞(iMSC)量産技術、足場材フリーで組織化する技術(軟骨)
また、ネットワーキング会場では、パネルディスカッションやピッチに登壇した方々と参加者同士が積極的に交流し、多様なバックグラウンドを持つ参加者が分野や立場を超えてつながり合う姿が見られました。新たな共創のきっかけとなる対話が生まれ、非常に有意義な時間となりました。

甘利先生と澤理事長 「夢」の前で Yanai myiPS製作所もご見学をいただきました