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国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 土井俊彦 病院長
2026年10月9日(金)、BioJapan 2026(パシフィコ横浜)で開催されたセミナー「柏の葉 × 中之島 For the Patient ― 新しい治療を早く、安全に、有効に、患者に届けるために ―」において、国立がん研究センター東病院と中之島クロスの連携・協力覚書の締結が発表されました。
本連携は、両拠点が有する臨床開発の知見、研究・医療の基盤、事業化支援、国内外のネットワークを生かし、日本発の研究成果を実際の治療として患者さんに届け、国際展開へつなげることを目指すものです。
日本発のライフサイエンス・イノベーションを世界へ
国立がん研究センター東病院の土井俊彦氏は、柏の葉が担う「グローバルゲートウェイ」としての役割に言及しました。柏の葉では、早期臨床開発から臨床試験、事業化支援、海外展開までをつなぎ、研究成果の実用化を後押しする取り組みが進められています。
一方、澤芳樹理事長が紹介した中之島クロスは、研究開発、医療機関、スタートアップ、製造機能が集積するイノベーション拠点です。医療と産業が近接する環境やグローバルなネットワークを強みに、研究成果の事業化と海外展開を目指しています。

早期の治療提供と、承認に必要なエビデンスの両立
パネルディスカッションでは、患者さんに新しい治療法をより早く届けることと、安全性・有効性を裏付ける十分なエビデンスを確保することの両立が、重要なテーマとなりました。

土井氏が開発の初期段階からGCPやGMPを意識し、国際的に通用する品質とデータを確保する重要性を強調したのに対し、澤氏は、再生医療製品の品質評価には、細胞の生存性や機能性など、生きた細胞ならではの特性を適切に捉える視点が欠かせないと指摘しました。
議論は製造コストの低減や品質の国際標準化、開発期間の短縮、規制科学の発展にも及び、臨床研究の早期段階から品質管理とエビデンスの構築を重視する「検証型臨床研究」の仕組みづくりが、両拠点の連携における今後の方向性として示されました。

研究成果を社会実装につなぐ、人材と事業化支援
研究成果を新たな治療法として患者さんに届けるには、研究開発から臨床応用、事業化までを見通した戦略が必要です。
大阪大学の森口悠氏は、研究、臨床、事業開発、保険償還など、異なる領域を横断して開発戦略を設計できる人材が欠かせないと指摘しました。研究者主導の開発では、臨床導入や費用対効果、知的財産、事業化に向けた検討が後回しになりやすいことも課題の一つです。
さらに、スタートアップの成長を支える人材にも議論が及び、経営を担うCEOに加え、事業運営を担うCOOや、科学的知見を事業化につなげるCSOなど、多様な専門人材の育成についても意見が交わされました。
患者さんの生活の質を見据えた医療の実用化
国立がん研究センター東病院の西澤祐吏氏は、外科医の立場から、新たな治療法の価値を生存率だけでなく、患者さんの機能回復や生活の質(QOL)の観点から評価する重要性に言及しました。
また、新たな治療法を実際の医療現場に普及させるには、臨床的な有効性を示すだけでなく、診療ガイドラインへの反映や保険適用など、さまざまな課題への対応が求められます。
こうした課題を踏まえ、患者さんにとっての治療の価値を見据えながら、研究開発から臨床応用、医療制度への導入までを一体的に考える視点の重要性が、改めて浮かび上がりました。
両拠点の連携が拓く、新たな可能性
両拠点の今後の連携については、製造基盤や関連資材の共有・標準化によるコスト低減、AIやロボティクスを活用した細胞製造の自動化、国際的な規制要件を見据えた臨床開発体制の整備など、さまざまな可能性が議論されました。さらに、研究の初期段階から臨床ニーズや市場性を踏まえ、海外の企業や投資家、規制当局との連携を進めることも重要な視点として挙げられました。
モデレーターを務めた土原氏は、海外の既存モデルを模倣するのではなく、日本発で世界と競争できる医療・再生医療エコシステムの構築を目指すという方向性を強調しました。
国立がん研究センター東病院と中之島クロスの提携は、両拠点の強みを結集し、研究成果の実用化とグローバル展開を加速させる新たな一歩です。日本発のライフサイエンス・イノベーションを世界へ、そして新たな治療を待つ患者さんへとつなぐ取り組みが、ここから始まります。
